空ずる

現代は「個人の尊厳」ということを実に口やかましく申します。しかし、その個人がどこに、どんなそんな尊厳を持っているかを学ぼうとはしません。また小さな自分を中心に、他者との関係を従属的に考えがちな発想法のために、自分の主義主張だけが尊厳だと思いこむ危険を生じます。したがって、他者を敵視しがちです。一個の自分が中心になるとエゴイズムになる。このエゴを仏教では「自我」と名づけて戒めます。

なぜなら、自我は閉鎖的・孤立的な存在です。その壁を打ち破り、めいめいの穴から戸外に出て共通の空気を吸い、他人の悲しみや苦しみに共感しないかぎり、本当の個人の尊厳はありえないでしょう。この自我の考え方を否定してゆくのを「空ずる」と申します。

般若心経入門(松原泰道)」〜序章、p50

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